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最初にそれに気づいた時はただの加護欲だと思った。

怪我を負った子供が目の前の食事に必死になって齧り付いている。
碌でもないホームパーティーの後だったのも手伝い、それを子供への温情と、一日限定の人恋しさを混ぜ合わせた結果だと結論づけた。
そうでなければ可愛がりたいとか、頭を撫でたい、抱きしめたいなんて思う訳が無い。小動物を愛でる様なものだと自身を納得させたし、そうだとしか考えられなかった。

違和感はしばらく後に事務所で起こった。
ソファで寝こけている子供に親切心でブランケットを掛けてやるつもりだった。寒そうに見えたから、本当にそれだけのつもりで。
だらしなく開けた口元に目が行って、つい「可愛いな、キスをしたい」と勝手に言葉がこぼれ落ちた。フリーズ。
次の瞬間にはおいおい何を言っているんだ!?正気か?と柄にもなく動揺して掛ける予定のブランケットはおざなりに投げ出された。逃げ出した。同じ空間にいる事がいたたまれなかった。車に乗り込むと突っ伏す。これは一体どういう事だ。この感情は。

パーティーの日から距離が近くなったのは分かっていた。歯車が動き出したのはあの日に違いない。
実際その後に彼とは実体としてのパーソナルスペースだったり、心の距離だったりしたものがぐっと近くなった。コーヒーを入れてきてくれた。自発的に何か手伝うことはないかと伺う。仕事に追われた日何かにゃ目元に出来た隈を見て心配をする。
プライベートでも、少年は良き友人のように接してくれた。普段は決して上司に言わないようなスラングを叫ぶわ、応援しているフットボールチームが勝てば抱き合って喜んだり、ピザのトッピングで喧嘩してみたり、苦手な食べ物を相手の皿によそったり。予々良好な関係であった。
その矢先にこれだ。
ならば可愛いと思ったのは何故だ?

1人目のスティーブンが答える。

K・Kや他の奴らを見てみろよ、たまに可愛いなんて言いながら少年を構い倒してるだろ?それと同じさ。年が大きく離れて、小さくて、未成熟で、戦うすべも、身を守ることも上手くできない子供なんだ。守ってやりたいと、可愛いと思えるのは必然だ。
確かにその通りだと納得した。
別のスティーブンが「お前が子供を可愛がるタチか?」と横槍を入れてきたが無視した。

ならキスは?

スティーブン議会は騒然とした。あれやこれやら2番目3番目4番目とスティーブン達が意見を述べるがどれもパッとしない。
ヤジが飛ぶ議会のさなか、7番目のスティーブンが挙手をした。
なぁ兄弟、俺達だっていい歳だ。同期でガキが何人もいる奴だってわらわら居る。つまり、だ。少年に本来持つことの出来ない息子の影を見出しているんじゃないか?父性だよ、父親なら子供を可愛いとも、キスしたいとも思うだろう?
パーフェクトアンサー!周りのスティーブン達もまさにその通りだと声を上げ、拍手喝采のち握手を求めた。
最初に横槍を入れてきたスティーブンだけが「そんな訳が無い、今に後悔するぞ」と不満げに鼻を鳴らした。
ともかく議会はほぼ一致した。限りなく正解であると誰も彼もが安心した。(1人だけ否定的にギャンギャンと騒いでいた)
これでスティーブンの違和感は消え去り、父親の様な温かい気持ちであったのだと納得、収束するはずだった。そこに疑いなんてものは微塵もなく、そうかそうかこれが父性ってやつかと気ままに遣り過ごせたはずなのに。

そう、たった今、目の前の惨状を理解するまでは何の疑いも持たなかったのに!

ぐっしょりと白い粘液がまとわりついていただけなら笑い話で済んだ。こんな歳になっても夢精なんてするのかと。
問題は夢の内容だ。何をどう思い返しても、白い肌を晒し、善がる姿は紛れもなくレオナルド・ウォッチだったのだ。
情報を売り買いする女達ではない。胸の大きいカロリーナでも、豊かなブロンドが美しいマーセラでも、キスの上手いマチルダでも無く、レオナルド・ウォッチである。
父性愛説否定派のアローンだったスティーブンが勢い良く立ち上がり、項垂れる他のスティーブン達を指さし喚いた。
そら見たことか!言っただろうが!そもそもお前がそこら辺の子供を可愛がる性質なんて持っていないんだよ!そこから間違いだったと気付きもしないなんてちゃんちゃら可笑しいったらないぜ!高らかにラッパを鳴らして勝利の宣言をする。お前、この事実がどういった意味を持つのか理解してるのか。
顔を覆い、大きなため息を吐き出した。
夢の中のレオナルドはくびれも無ければ乳房もない。平凡な、そこらにありふれた少年だった。例え肌を晒したとて淫乱さとはかけ離れた姿なのに。 夢で善がる少年を脳裏に思い起こした。
思い起こして、また熱を持ち始めたことに気づく。

「最悪だ、冗談じゃない」

スティーブンは血の気が引いた。


最悪の事態から逃れようと必死だ。
まだ希望は残っているはずだと、実は潜在的バイであり小児性愛者かもしれないだろ。
変態金持ちお得意の児童カタログ(明日にでもこの人身売買業者は潰す予定だ)を引っ掴んで項垂れた。掠りもしない。
良かったなスティーブン。お前はバイでも小児性愛者でも無いみたいだ。
次いで少年の履歴書写真を取り出す。緊張した面持ちで唇をぎゅっと噛み締めている。写真を撮られるのが苦手な子供のようで可愛い。とまで思考が行って項垂れた。クリーンヒット。
最悪だスティーブン。お前はバイでも小児性愛者でも無いが心底少年に惚れている。

何かの間違いであって欲しかった。だってお前、信じられるか?
30年以上生きてきて本気で好きになった相手が10以上歳下で男なんだぜ?
この想いはどこに押しやればいい?どう消化すればいいんだ。
告白なんてしてみろ、振られて気まずくなって職場が息苦しくなり友人を1人失うことになる。かと言って秘めたままずっとそばに居て耐えられるのだろうか。
高々恋愛如きにこれほどの熱量を伴うなんて知らなかった。少年が笑うだけで心臓が張り裂けそうで、息が苦しい。でも満たされる。苦しいのに幸せなんて意味がわからない。
なのにアイツは何も警戒しちゃいないし当然僕が抱いてる想いに気付くわけが無い。発想にすら至らない。だから昨日みたいにヤンキースが負けたと喚きながら腹に抱きついて来るんだ。少年がチビで良かった。心臓の位置だともう駄目だ。表面は取り繕えたとしても、内側は緊急アラートが鳴りっぱなしの恐慌状態。
どうすれば良い。どれが最善策なんだ。こんな感情は知らない。
怖い、幸福だ、背筋が凍る、胸が暖かい、息が詰まる、つかえが取れる、離れるべきだ、近くにいたい、欲しい、手を伸ばすな、彼を得たい、崩壊する、欲しい、それだけは叶わない、欲しい、愛している、欲しい、振り向いてくれ、欲しい、彼に愛されたい。
答えを見つけることすら出来ないのがこんなに辛いと思ってもみなかった。


子狡く非正攻法であり、安易な道に僕は逃げた。
惚れ薬などといういかにも阿呆らしく胡散臭い錠剤を少年のグラスに入れてカラカラと溶かす。
ラットで実験してみたがチューチュー激しく鳴くだけで効果の程はよく分からなかった。副作用がないだけマシだ。リスクのない博打と同じ。だったらやるが吉。

なんでもない顔をして錠剤を溶かしたレモネードを彼に。濃いめのコーヒーは自分に。
視線を向けないように必死だった。柔らかいはずのソファは固く感じ、背を丸める。大画面に映る映画なんてキュビズムのように見えた。中身は全く頭に入らない。
ゴクリ、と隣でレモネードを飲み込む音がする。
神よ、許したもう。

ぎゅっとシャツを掴まれ、弾かれたように顔を上げる。
彼は首まで真っ赤になっていて困惑した顔で口をパクパク開いたり閉じたり。かつて日本庭園で見た食欲旺盛な鯉を思い出した。
「あ、の」
まじまじと彼を見つめた。見つめるだけでは飽き足らず気がつけば勝手に僕の右手は彼の頬へと導かれて行く。ドクドク心臓の音がうるさい。心臓を取り出して黙らせてやりたかった。叫び出したい衝動を抑える。
ふるりと震える睫毛は長い。指先で撫でるとひくりと呼吸を乱した。
世界が、無音に。

「好きです。スティーブンさんが、好きです」
「僕もだ」
即答してからそのまま彼の唇を貪った。
無理矢理舌をねじ込んで絡ませて唾液を飲ませる。呼吸の仕方が分からずにあっぷあっぷと溺れかけていたが容赦なく蹂躙した。
息を乱し、飲み込みきれなかった唾液を垂らした少年は正直腰に来る。夢の中で見た彼よりも余程イイ。
腰を掴んで強引に引き寄せた。服の中に手を突っ込むと流石に怯えの色が滲んだのは無理矢理作られた感情だからだろう。これ以上は駄目だ。
頭の冷静な部分が後悔するぞと警笛を鳴らす。
惚れ薬で惚れられても嫌われればそこでおしまいなのだ。
「ごめん、嬉しくて調子に乗りすぎた」
「う、あ。や、大丈夫っす」
顔を逸らした彼の耳は赤く染まっていて、舐りたいのをぐっと我慢した。代わりに持て余していた左手と彼の右手を絡める。所詮恋人繋ぎであるが初恋童貞と化していたので顔に熱が集中するのが分かった。
薬のせいだろうが何だろうが想いが通じ合えば何の問題もない。本気でそう思っていたし8人のスティーブン達だって同意見だ。皆まともな恋をするには捻くれ過ぎていたのだった。

レオナルドの頭がふわふわと茹だってるうちに、彼のアパートを解約して少ない荷物と共に家へ運び込んだ。何もすぐさま同棲しなくとも良いのではないかとボヤキはしたが、こういったものは先延ばしにするほどズルズル長引いて経ち消えてしまう事をスティーブンは知っていた。

錠剤1つがもたらした幸福は素晴らしかった。
眠る時も、起きる時にも隣に彼が居る。夢見る夜、眩しい朝、当たり前の幸せを取りこぼして生きてきた分胸がいっぱいになる。
時間が合えば一緒に家に帰ってただいまを言う。レオが先に帰っていればおかえりを言ってくれる。セックスには踏み込んでいないがキスはしてくれる。
何より想いを返してくれる事が1番嬉しい。拒絶も哀れみも嫌悪も無い。砂糖を煮つめた顔をして愛してると言ってくれる。これが一番響くのだ。


はらはらと空から落ちてくるのは花びらだった。
クロヘルリリロケルエム大量発生のせいで雨も雪も雹も全て白い花びらとなって街に降り注いだ。
最初は幻想的だフラワーパーティーだ花の都だと騒いでいたが、いい加減1ヶ月も続くと飽きる。何より乾いて蒸発することもなければ地面に染み込むことも無い。人々に踏み抜かれ蓄積された花びらは腐って茶色く濁り、汚いゴミでしかなかった。
不貞腐れていた僕は降ってきたばかりの花びらを踵で磨り潰した。所詮八つ当たりだった。

数時間前、僕らは喧嘩していた。
ロジャーはレオの元バイト先の同僚で、レオに想いを寄せていた時期があった。(もちろん目の前でキスして恋心を潰してやった。レオにはビンタを貰った。)その男とレオが二人きりで出掛けるというのが議題。問題は行き先が遊園地で、その事を朝になって知らされたからだ。
別にレオナルドにやましい気持ちがある訳じゃない、ロジャーは既に新しいガールフレンドが出来たし、恋心が友情に変わる様を僕は見届けた。
友達同士で遊びに行くだけ。レオにはレオの付き合いがあるのは分かってる。分かってはいるんだ。
僕は彼の事となると途端に狭量な奴になっちまう。
一端はかつてグラスに溶かした1錠の惚れ薬。とっくに効果は消えてるのに彼は隣に居る。流されているのか本心なのか、それとも刷り込みか。分からないし聞く勇気もなかった。
僕達が付き合い出したきっかけは惚れ薬を君に飲ませたからなんだけど、今でもそばに居てくれるのは僕を愛してくれてるからだよな?
んな事聞けるかばか。
常に隣に留め置かなければ不安になる。作られた感情が始まりなら何時終わるのか、何がきっかけで終わってしまうのか。目覚めるのが怖い。だからセックスだって出来ないまま2年が経ってしまった。したくないわけが無い。ずっと我慢してるし触り合う程度はやった。でもあの日みたいに怯えられたら?嫌われたら?手が出せないでいるのは失うのが怖いからだ。
それも今日までかもしれない。

アンタの想像してる馬鹿な事なんて無いんですからねと玄関に向かう彼に「そうは言うけどな、薬でも盛られたらどうするんだ。本当に信用出来る相手か?」と女々しく喚き立てたのがいけなかった。
レオは動きを止めて言った。
「貴方みたいに?」

気付いていた。僕はポカンと口を開けて突っ立っているしか出来なかった。彼はその間にトントンと靴を履いて行ってしまった。
腕時計を見ればとっくにレオの帰宅時間は過ぎている。顔を合わせるのが怖くて僕は外へ逃げた。
議会はお通夜状態だ。
1人目のスティーブンは諦めるしか無いと言うし、2人目は葬式会場の手配をしている。
3人目は監禁してしまえばいいと4、5人目と話し合い実行計画を綿密に審査している。6人目は泣き伏して話にならない。7人目はレオとのアルバムを噛み締めながら捲っては祈りを捧げている。
8人目だけはまだ希望があるかもしれないだろ!と他のスティーブン達に呼び掛けているが誰も聞いちゃいない。俺もだ。
足先に落ちてくる花をひとつひとつ潰していく。
綺麗ですねと笑っていた彼は隣に居ない。本当はさ、君よりも僕の方が何時だって卑怯で弱虫で逃げてるんだよ。レオ。


狸寝入りは苦手でも、真っ暗な部屋ならどうにかなる。
瞳を閉じて、呼吸を一定に繰り返す。眼が良い分僕が有利だ。
触れるか触れまいか、ゆらゆら不安定な手を繋ぎ止めた。文字通り飛び掛かって腕に抱き着いたんだ。体当たりでぶつからないとこの人はすぐに躱して逃げてしまうから。
「起きてたのか」
「この時間まで寝ないで頑張ってたんすよ。どっかの誰かさんが全然帰ってこないから」
抱き着く力をぎゅっと込める。もっと早くにこうしていれば良かった。
「ね、スティーブンさん。話をしましょう」
「明日にしないか、もう遅いだろ」
「明日になったらまた明日にしようって繰り返すつもりなんすよね。んなしちめんどうくさいの嫌ですわ」
いい加減観念してくださいよ。

スティーブン株価は下落の一途を辿っていた。ウォール街高層ビルからの身投げがブームらしく、一人また一人と手を振っては飛び降りて行く。下はぐちゃぐちゃだが気にする奴はいない。皆断罪を受ける前に死んでしまおうと我先の勢いで屋上に駆け上がっている。
台所でレオが作っているのはレモネードだ。僕は咽び泣きたい気持ちでそれを見ていた。言い逃れすら出来ない。確実に殺しに来ている。
「スティーブンさんはコーヒーでいいですか?」
「……うん」
コーヒー!コーヒーと来た!現場再現だ。濃く入れられてたら死ぬ。殺される前に死ぬぞ。
議会は紛糾していた。株価は暴落してるし超弩級の災害が各地で発生している。この世の終わりくらいは恋人と最後を過ごさせて貰うよ。おいおい恋人は目の前でドリップしてくれてる彼だろ。まぁ恋人じゃなくなるかもだけどな!ははははははは!はぁー…今のジョークは一生使うな。いいな?

渡されたコーヒーは濃いめだった。
添えられたミルクと砂糖を全部ぶち込む。これなら僕の中でコーヒーとは呼ばない。ブラック以外は認めない。つまりこれはコーヒーではない。あの日の再現ではない。
見苦しい抵抗にレオは呆れた目を向けた。何か言いたげだが口を噤む。
分かってるよ、普段ミルクも砂糖も入れないだろアンタとでも言いたいんだろ。知ってるよ。ああもうクソ甘い、飲めたもんじゃない。
「入れ直しましょうか」
「いや、いい」
「そうですか。で、本題なんすけど」
「やっぱり入れ直してくれないか」
「入れ直しながらでも話は進めますよ」
「ならいい」
「じゃ、ソファ行きましょ」

ちくしょう!逃げ場がない!
レオナルドはレモネード、僕はコーヒー。目の前の大きな画面は昔ヒットした映画。ロマンス映画のそれがゲルニカに見える。ソファは柔らかい素材なのに硬質に感じる。

「もうね、うんざりなんですよ」
ゴクリと唾を飲み込んだ。8人のスティーブンは互いにピストルを向けていつでも逝ける準備をした。球は入っていない。が、レオの言葉が弾丸になる。
「だって普通気づくじゃないですか。薬の効果なんて永続的なものでもないし、精々1ヶ月でしたよ。頭ん中お花畑になってたのは。仕込まれたことくらい俺だって気づきますよ」
耳が痛い。俯いたまま頷いた。
「半年経ってもキス止まりで、1年経ってようやく手を出して来るかと思えば触るだけで、馬鹿にしてんのかってキレそうだったんですよこちとら。もう釣り糸垂らすだけ垂らしてそのままとか太公望かお前は。釣り上げろよって」
ん、んんんん?
「意地の悪い遊びのつもりなのかとも考えましたけど、アンタずっと幸せそうな顔するし、ロジャーの時はブチ切れてるし。だから本当に不思議だったんですよ。それで今朝の言葉でようやく合点がいきました。気付いてなかったんでしょスティーブンさん」
レオはレモネードを揺らして小首をかしげた。

「僕が貴方に薬盛られる前から好きだった事」

スティーブン達は即座にピストルを投げ捨て席に戻った。皆深呼吸して目配せをする。心の叫びは一致したようだ。
それではご一緒にどうぞ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
「ほらー!ほらやっぱり!気付いてなかった!気付いてなかった!」
「うるさい!黙れ!どういう事だ!?前から!?いつからだ!隅々まで吐けっ!」
「ホームパーティーの残飯恵んでくれた時からっすよ!」
あ の 時 か ら か !
ほぼ同時期じゃないか!レオは面白そうにウキャキャキャキャと笑い転げている。その笑い方サルみたいだぞ。やめないか。
「あー…クッソ、今までの葛藤が全部…最っっ悪だ」
「惚れ薬なんて姑息な手を使うからいけねーんすよ。でも良かった、これで心置き無くセックス出来ますね。準備したの随分前だから今日は無理っすけど」
聞き捨てならない言葉にピクリと反応する。
「おい今なんて言った」
「今日はセックス出来ません!レオナルド・パークは閉園しました!」
「ナイトツアーがあるだろ、その前だ。準備?君が?」
「どっかの鈍感臆病ビビリ野郎が中々帰ってこなかったせいで準備した意味無くなりました。じゃっおやすみなさいまた明日」
「おやすみレオナルド、おはようレオナルド。明日は今日だ。準備なら僕が手伝ってやろう」
「あっはっはっはっはっ!冗談キツ、え?冗談じゃない?」
嘘でしょダーリン。


スティーブン議会は部屋の飾り付けに大忙しだった。
レオナルドの中にスティーブンが入るまで間に合うだろうか。ケーキは?クラッカーは?七面鳥の焼き加減はどうだ?シャンパンはどこにあったっけ。ハートバルーンの数が足りないぞお前達。

色はどうする?
そんなの青と黄色でいいだろ。
飲み物は?
レモネードと濃いめのコーヒー!

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